夢うつつ

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それは新撰組となって間もない頃の事。 隊士募集が行われ、たった二人だけを隊士として迎え入れた。 一人は、少々荒っぽい剣をする男。 そしてもう一人は異常とも言える青年だった。 異常、と言うには幾つかの理由があった。 最初に上げれば剣。 新米隊士には隊の法度を破った者の介錯人をさせる。 彼は加納惣三郎(カノウソウザブロウ)、歳は十八。人を斬るのならば迷いが出て当たり前のようなものだが 青年は寸分の迷いも、躊躇(チュウチョ)も無く一太刀で罪人の首を落としてみせた。 次に上げるのならば容姿。 切れの長い目に美しい唇。白い肌。 全てにおいての整い方はそこらの美女よりも妖艶なものだ。 ただ、その事でなく、肝心なのは前髪がある事なのだ。 こうも眉目(ミメ)麗しい青年が前髪を残したままだと、どうも衆道に通じている者のように思わされる。
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