夢うつつ

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近頃、馬越三郎を手籠めにしたという噂が流れていた武田の元に行くのは もちろん気が進まない。 だが、しかし行かなければ何を言われるか分かったものでもない。 仕方なく惣三郎は武田の部屋に顔を出した。 「何用でございましょうか。」 部屋の中には入らず、声をかけると軽く手招きされる。 内心、ぞっとしながらも逆らう事はなく進み出る。 「今夜、島原にでも行かないか。」 島原と言えば花街。 (この人まで私をからかうのか。) うんざりした、という表情を露にした惣三郎に武田は笑う。 ただ、その笑いは別の意味だと気がつかず青年は馬鹿にされた、と勘違いし 「せっかくなのですが今夜は非番でないのでまた今度にして下さい。」 早口に言うと返事が返るのも待たずに部屋を早足で出て行った。 (私をからかって、いったい何が面白い。) 早足で廊下を歩く彼は端から見ても分かる程怒っていた。
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