奴は来た。

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どういうことなんだ、一体。1秒だか100年だかわからない沈黙が流れる。二つの静かに燃える闘志がぶつかり合う・・・嵐の前の静けさ。ホルンの一際間延びした音色が響いた。 「あほくさ」 ラヴはかったるそうに言うと、刀を引いて距離を取った。刀身が鞘に納められていく。朱に染まった教室で刀を振るう少女は酷く美しかった。 「なんだラヴ、その調子じゃいつまで経っても斬れんぞ。」 瑛利餡が煽るように言う。 「よく言うよ、あんたが邪魔する限り斬れっこないじゃん」 ラヴはそれだけ吐き捨てるとくるりと回れ右をして、右腕をさらっと伸ばす。途端に桜吹雪が舞い、視界がゼロになった。 「え、ちょ、なんだよこれ!」 「目くらましだ」 瑛利餡はぶっきらぼうにそう告げると、さっと払いのける動作をした。すると桜吹雪が嘘みたいに消え失せて、目の前にはさっきまでと同じ夕日が差し込むあかね色の教室がありありとそこにあった。 「なんなんだよ・・・」 状況がうまく飲み込めない俺は混乱する以前に、軽い放心状態に陥っていた。よし、おーらい。状況を整理しよう。俺は掃除当番を任されて掃除していて、何故か例の転校生に童貞だと罵られ、その直後ラヴとかいう銃刀法違反の日本刀女に斬りつけられ、瑛利餡に間一髪のところを助けられ・・・まだ助けられた礼を言ってないことに気がつく。 「ありがとう」 「え?」 その時の瑛利餡の表情は本当に滑稽だった。鳩が豆鉄砲を喰らったようとは、この事を言うに違いない。 「だから助けてくれたんだろ?・・・ありがと」 なんだか言ってるうちにだんだん恥ずかしくなってきた。自然と顔を逸らしてしまう。だがこのエイリアンは 「勘違いするな」 「は?」 「私は私の役目を果たすまで。貴様に気があるとかそんな訳ではない。」 非常に可愛げのない事この上ない返事をしてきやがった。
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