* カノジョの品格

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薄い茶色のチェックのワンピースに、白のニットボレロ。 ワンピースの裾には白のレースがあしらってあった。 黒のリボンパンプスと、あまり華美でない小さなハンドバッグは、お店の衣装からこっそり貸してくれた。 夏に、水色のワンピースをショーウィンドウから眺めたあのブランドのお洋服。 …あの時指をくわえて見ていたお店の服を、まさか自分が着る日が来るとは。 自分で買ったモノじゃないけどさ。 それにしても、人生ってホント何が起こるか分からない。 姫菜さんはすぐに、私のデートの相手が誰だか分かったみたいだった。 私が何も言わなくても、別れ際に「ロクシタンのお礼をカラダで返してきなさぁい」ってニヤーッと笑ってた。 …その言葉には苦笑いしか返せなかったけど。 お店を出ると、私は早歩きで那智さんのお店に向かおうとした。 那智さんには『これから行きます』ってメールを入れた。 『気を付けて来いよ』の返信にはついニヤケてしまった。 その返信を確認した所で、男の人の声に呼び止められた。 「華恋さん!!」
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