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「…ねぇ、何でこんなことするの?…アナタが言うように愛し合ってるなら…こんな刃物必要ないでしょ?」
なるべく優しい声を心掛けたが、やっぱりどうしても声が震える。
言ってるセリフも自分でちょっと気持ち悪い。
「…あぁ、華恋さん、華恋さんはきっと着物も似合うでしょうねぇ…。」
坂井さんが何度も私の髪に頬ずりした。
…また会話不成立かよ!?
もう何なのよー!!!!
ふと、坂井さんの集中がカミソリから外れているような気がした。
私はそれこそピンチの時のヒーローのように、「今がチャンスだ!!」と心につぶやいた。
持っていたハンドバッグを震える手で握り直すと、思いっきりそれを坂井さんの後頭部にめがけてぶつけた。
一瞬、坂井さんは私が何をしようとしたのか気付いたみたいだったけど、咄嗟の防御はできなかったみたいだった。
前のめりになった坂井さんの手が離れて、当然、私は一瞬で飛びのいた。
そしてそのまま駆け出そうとした。
…けれど、震える足がもつれて、走り出すことはできなかった。
くるりと向きを変えた所でカクンと私の膝が折れて、べしゃっと四つん這いになった。
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