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「…華恋さん…。」
低い冷たい声。
後ろを振り返ることもできずに、その声だけでガクガクと全身が震え出した。
タラリとこめかみを冷や汗が伝う。
…やっぱりテレビみたいにはいかないよね…。
もはやここまでか…。
無念。
私がさすがにもうダメだと絶望を覚悟した時、後ろでドカッという音と、「ウゲッ」みたいな叫び声が聞こえた。
しばらく硬直したまま後ろの気配を探ってみたけど、坂井さんが襲ってくる気配がない。
代わりに、坂井さんとは違う別の男の人の低い声。
「テメーなんかが勝手に触っていいシロモンじゃねーんだよ。」
そしてこの声はよく知ってる。
私は四つん這いになったまま、ゆっくりと後ろを振り返った。
そこには、那智さんにカミソリを持った方の手首を掴まれ、背中に思いっきり蹴りを入れられて倒れこんでる坂井さんの姿。
手首を後ろに引っ張られてるので、軽く関節も決まってる。
坂井さんは苦痛に顔を歪め唸っていた。
那智さんが更にもう一度、容赦なくその背中にドスッと蹴りを入れた。
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