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「まぁいーや。参考になった。サンキュ。」
「はぁ…。」
礼を言われるほどでのことでもないぞと思って、首をかしげつつも曖昧に頷いた。
やがてしばしの沈黙。
那智さんは一度キッチンに消えると、今度はカプチーノを持って戻ってきた。
「ホラ。」
楽しいイタズラを見せる子どものように、ニカッと笑ってカップを見せる那智さん。
私は「?」を顔に張り付けながらも、見せられたカップに目を落とした。
「あっ!!」
「我ながら上出来。」
那智さんはホントに子どもみたいに、満足そうに笑ってる。
カップの表面には泡で描かれたラテアート。
髪を一つ結びにして、眼鏡をかけた女の子の横顔。
「…これ!?」
「似てんだろ?」
私は何の言葉も発せずに、ただその芸術に息を飲んで見とれた。
テレビでは見たことあったけど、本物を見たのは初めて。
それなりに技術が必要で大変そうだと思ってたのに、こんなに近くに、こんなに素敵に描ける人がいたなんて。
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