02.わからない心

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どこを見ても視界に人が入ってくる朝のホーム。 今日も人でいっぱいだな。 これから乗る電車の混雑を想像すると、一気に憂鬱な気分になった。 時計を確認したらいつも起きるよりも30分早く目が覚めたことに気付き、いつもよりゆっくり準備していたら駅に到着するのは普段より遅くなってしまった。 あくびを1つかみ殺したとき、ちょうど電車がホームに入ってくる事を知らせるメロディーがなる。 アナウンスが流れ始めると、人々は椅子から立ち上がって列に並んだり、ケータイをバックにしまったりしている。 しばらくすると私が乗ろうとしている電車が到着し、ドアが開く。 前の人が動き出したので歩を進めると車両に入ったと言うところで聞き覚えのある声が私の名を呼んだ。 「あっ、優奈先輩!」 その声は私の悩みの種である人物の声だった。 「渡瀬君・・・・」 目の前には反対側のドアにもたれかかる渡瀬君がいた。 今まで一度だって朝に会ったことがなかったのに、何て考えてる私をよそに渡瀬君はこっちに来る準備を始めていた。 ちょっと待って!今からこっちに来るつもり!? ハラハラしながら彼の動きを見守っていると、器用に人を交わしながらあっという間に私の目の前にやって来た。 その素早さに呆気に取られながらも、不思議に思っていた疑問渡瀬くんに尋ねた。 「渡瀬君ってこの時間帯だったっけ?」 「いいえ、今日はいつもより早く起きたんで1本早いのに乗ったんです。でもいいですね、やっぱり。早い時間の電車は空いていて。俺もこれからはこの時間にしようかな」 ということは、毎朝一緒に学校に行く事になるのだろうか。 いやいや、今日はたまたま会っただけであってこれが毎日続くなんて事はないでしょう。
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