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「先輩、俺に彼女がいるか気になるんですか?」
上目遣いに尋ねてくるその目は何かを企んでいるような、そんな風に見えた。
「だって、彼女持ちの人と、二人だけでこういうお店入っちゃ悪いじゃん」
あくまでも冷静に返答をする。
確かに気になるけれど、ただ単に私が気にしているだけとは言いずらかった。
「違いますよ。前に幼馴染に無理やり入らされただけです」
渡瀬君は、唇を突き出してすねたような顔で頬杖を付いた。
そのままストローをくわえて、ウーロン茶を口に含むと上目遣いに私を見る。
「何?どうしたの」
「・・・・いんですか?」
「え?ゴメンもう一回言って。聞こえなかった」
渡瀬君は目を伏せて目線を逸らし、隣の席に座る付き合っているであろう男女を見ると、少し眺めてからこっちに向き直った。
彼の声を聞き逃さないように耳に神経を集中させる。
「先輩は、俺のことに興味ないんですか?」
微かに動く唇から発せられる声は、店内の雑音に負けてしまいそうになるほど小さな声だった。
「んー・・・どうだろう」
他人事としてならば興味はある。
例えば、学校にすごくかっこいい人がいるとする。
そうすれば大半の女子たちはその王子の好きな人やら、好みのタイプなんかに興味を持つであろう。
私の渡瀬君への興味はその程度なんじゃないかな。
だって、私には渡瀬君の恋愛を気にする理由なんてない。
ただの先輩後輩の関係だし、それ以上の関係になる事は私の未来にはないのだと思う。
そんな風に考えるとなんとなく胸が重くなるような変な感じがした。
スプーンを空になったお皿におくと渡瀬君は時計を見る。
「もうそろそろ、帰らなくちゃいけませんね。行きましょう先輩」
「あ、うん。そうだね」
すでに6時30分をまわっていた。
見たい番組もあるし、渡瀬君の言うとおりに帰る準備をする。
渡瀬君は私の2駅先に住んでいるらしい。
だから最近は同じ電車に乗って帰ることが多い。
いつもは一人の電車だったから、渡瀬君がいると何だか安心する。
最近では私のそばに渡瀬君がいることが当たり前になってきている。
でも私は、あまり深入りしないこのような関係のままでいたい。
そんなことを考えて席を立った。
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