出会い

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その人は、とても大っぴらに人に言える人生は歩んでこなかった。 それでもその人はその人生に幸せを見出し、懸命に生きていた。 思春期には売春に走り、学校を辞め、不良仲間とつるんで過ごす日々。 そんな中、その人は恋をする。 しかし、裏切られ傷つくだけの悲惨なものだった。 それを追う形で、その人が赤ん坊を身籠もっていることが発覚した。 当時、まだその人は10代。 当然と言わんばかりに、産まれてきた我が子は 自分を裏切り傷つけた、そんな相手の親に引き取られた。 荒んだ人生、その子を育てたいと言う気持ちがその人を支えていた。 どんな手を使ってでも取り返したかった。 なのに・・・現実はあまりにも残酷だった。 周りの助力もあり、月に数回だが会うことを許された我が子。 漸く見えてきた光は、呆気なく途切れた。 病魔が・・・・その人を蝕んでいた。 病名は白血病。 最早、愛おしい我が子に会える時間も限られていた。 私は、SNSサイトでこの人物と知り合い、この話を聞いた。 誰でも良いから聞いて欲しかった。 その相手がたまたま私だっただけだ。 これはメールのやり取りで伺った話だ。 その人はメールするのも辛いけれど、もう先は短くないから誰かに伝えたかった。 残したかった、と私に告げた。 私は当時、地元のバンドでボーカルをしていたこともあり、その人に聞いてみた。 "あなたの曲を唄わせてくれないか、あなたの想いが消えない様に、形にして残させてくれないか"と。 あまりに突然な提案だったが、その人は快諾してくれた。 子を想う母に迫る死、二度と逢えぬ愛しき笑顔 それを思いながら書き上げた。 そして曲が出来上がり、Demo音源をその人に元へと送った。 勿論、ライブでもそのエピソードと共に披露させて頂いた。 ライブ会場全体が泣いていた。 その旨を記載し、Demo音源が届いたか確認する内容のメールを送った。 もう、これが最後のやり取りになります。 曲、聴きました。嬉しかったです。 ありがとうございます、本当にありがとうございます。 これが最後に届いたメールだった。 今となれば、私が聞いた話も本当かどうかは解らない。 でも私はこれを残しておきたいと思う。 よって、ここにその歌詞を記載しておく。 ----------------
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