のらりくらり

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俺の腕ごと抱えているナコの腕を払いのける。まだ喧嘩している二人に聞こえる様に、手をパンと鳴らした。 「「っ!?」」 耳が良い二人にはこれが1番手っ取り早いのだ。 「ほい、喧嘩はそこまで。食堂行くぞ」 「蒼汰とごはん!」 「蒼汰に餌付け!」 二人は音でビクリとしたが、俺の言葉で喧嘩をピタリとやめた。 っておいナコ、餌付けっていうのやめろ。 「……まあいいや。よし、行こ」 「ちょっと蒼汰くん、いいかな?」 「え」 教室を出ようとした瞬間、3人の女子に呼び止められた。 俺なんかした…? 「オイ、俺の蒼汰に何の様だ」 「違うって僕の」 「どっちのでもないから」 このやり取りが始まると、きまって二人は俺が止めるまでやめない。 過去に一回放置したら一日中やってた事があった。何この恥ずかしい獣人達。 ふと視線に気が付くと、女子達が表情を固くしながらこちらを見ていた。 放置してしちゃったから怒ってるっぽいな…。う、ごめんなさい。 「あ…、ごめん。何だっけ」 「ううん、いいよ。少しお話ししたいんだけど……」 「いいよ。この二人居ても大丈夫?」 俺は、何故か無表情な二人をちらりと見ると、へらっと笑った。 しかし女子達は顔を見合わせると、口々に「ちょっと…」と言いはじめた。 「うーん…、ちょっと駄目かな。蒼汰くんにだけ話があるんだけど」 上目遣いで見てくる一人の女子の目は、どこと無く獣を思わせる物だった。…あぁ、断れない雰囲気だこれ。 「ん、分かった。…てな訳で食堂行ってらっしゃい」 「えーっ!?蒼汰と一緒にごはん食べたい…」 「後で行くから」 「うぅー…」 「蒼汰くん、早くしてほしいな」 泣きそうなコウの頭を背伸びして撫でようとしたら、女子の声で急かされた。 「あぁ、うん…。ほら行け」 「蒼汰に手ぇ出すんじゃねぇぞ」 「同じく。触れただけで殴るからね」 「やめろ馬鹿!!」 そう言いながら二人は出て行った。 ……なんだよもう。
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