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二人が食堂に行ったのを確認して、俺は女子に連れられて人気の無い空き教室に着いた。
「で、話ってな」
「あのさぁ蒼汰くん、二匹も獣人飼うとか何様?」
「へ」
いきなり女子に睨まれ、そう言われた。…え、なんの事。俺一人しかパートナーいないし。
頭にハテナを浮かべていると、明らかにイライラしながら話を続けた。
「しかも獣人の中で一、二を争うあのイケメン二匹を」
イケメン、といわれてもう一人がコウだと分かった。
コウは何故かついて来てるだけでパートナーではないんだけど。
「そんなんじゃ」
「じゃあ何?あっちが勝手に懐いたっていうの?あんたみたいななんの取り柄も無い男にコウ君もナコ君も懐く筈ないじゃない!」
そう言われて、体がムカッとした。
あの二人はそんな獣人じゃない。こいつらは何も分かっていない。
さっきから獣人を馬鹿にしたような言葉。イラつく胸を抑えながら顔を平然と保っているが、ふつふつと怒りが湧き上がってきていた。
「……違う」
「何が違うの?…あぁそうよね、脅したんだから懐いて当然よね」
違う
「だってあの二匹捨てられ」
「違うって言ってるだろ!!」
「っ、」
限界だ。
「……さっきから聞いてればなんだよ、飼う?二匹?…あの二人はペットじゃない。家族だ。それをあんたらのおもちゃみたいに言うな!!」
俺が怒鳴ってびくりとした女子は、少し唇を震わせながら反論してきた。
「あ、貴方の物でも無い!偽善者の癖に!!」
「…っ!?」
おそらく怒りと羞恥で真っ赤になっている女子の腕が、気づくと思い切り振り上げられていた。
女子の腕力は小さいけど、反射的に目をつぶってしまった俺。
叩かれる…!
パシッ
「……っ」
「え、あ…」
なんだ今の音、しかも叩いて来ない…?
ひゅ、と息を詰めていたが、不思議に思い閉じていた目を薄らと開けた。
「はいストップ」
そこには大きな壁…もとい背中。
「ナコ」
「ナコ君…っ!?」
凛とした声を発し、女子の振り上げられた腕を掴んでいたのはナコだった。
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