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キーンコーンカーンコーン……
6時限目が終わったチャイムが鳴り授業が終わると、教室にいる生徒がわらわらと廊下へ出て行った。
(……僕も帰ろう)
僕は大きいチェック柄の青いリュックを背負うと、皆と同じ様に帰ろうとした。
その時、
「水野谷 歩はいる?」
ガラッと前のドアを開けて入って来たのは、背の高い男。
ていうか、
「僕……?」
男の突然の来客によってしんとした教室に僕の小さな声が響いた。
水野谷 歩(みずのや あゆむ)は僕の名前……の筈だ。
「!」
男がバッ!と勢いよく見てきた。どうやら聞こえたみたいだ。
男は何を思ったのか、僕を見つけた瞬間、真剣だった顔がまるで花が咲くかのような笑顔になった。
(……え、なにその凄い笑顔……)
男はツカツカと上履きを鳴らしながら早足で近付いて来るから、思わず後退りをしてしまう。
そして僕の前で止まると、にこりと笑って一言。
「ちょっといいかな?」
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