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「おはようございまーす」
「あ、おはよう康之君!」
身も凍るような冬の朝。
いつものように裏口から入って靴を履き代え、廊下を少し歩くと職員室のドアを開けた。
いつもとは違うのは、一段と寒くなったせいで降った雪と、忙しそうなベテランの先輩女性保育士さんだった。
「ど、どうしたんですか?そんな慌てて」
ドアを後ろ手で閉め自分の机に向かいながら、様々な書類の様な物をかき集めている先輩に声をかけた。
「色々あって、ねー…。でもちょうどよかったわ~!あたし今からちょっと出かけちゃうから、康之君によろしく頼んでもいいかしら?」
そう言って先輩は、何やら大きなバックと紙を沢山持って、俺が入って来たドアとは違うもう一つのドアからバタバタと出て言った。
「あ、はい、分かりました!!」
俺が先輩に聞こえる様に大きな声で言うと、ひょこっとドアから顔だけ出すと
「ありがとね!お昼には帰って来れると思うから、他の先生にも言っておいてくれると助かるわ!」
と言って、足早に裏口から出て行ってしまった。
「……はい」
嵐が過ぎ去ったかのような状況に、唖然として小さくなってしまった声は自分以外誰もいない職員室に小さく響いた。
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