君に会えたから

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「それだけじゃないよ。歩はそこらの人間とは全く違う。あいつらは見返りを求め、“いい事”をしようとする。俺にそれをする人間はほとんど、俺と仲良くなりたいがためにしているんだ。けれど歩は違った。歩は決して何も言わない。何も求めない。そこに俺は惹かれたんだよ」 熱弁を奮いだした柚季に、メロンソーダをちびちび飲みながら若干身を引く。 ……確かに、僕は人と喋る事が凄く苦手だ。思ったことを口に出せない為、言おうとした時にはもうタイミングが無くなっている。毎日その繰り返し。 そのため極力何も考えず、何も言わない方が気が楽だと気付いてしまった。 (……それでも体は動いてしまう訳で……) 何も考えない分、本能で動く事が多くなるのも必然なのかなぁ…と最近思い始めた。 「いや……僕は別に」 「別に?」 「人と、仲良くなる方法、よく分からない……だけ」 そういえばこんなに人と話したの久しぶりだ。なぜだかどきどきする。 ふと気になって、メロンソーダに向いていた視線を柚季に向ける。 ―――目が合った瞬間、ぎゅうと心臓が小さくなった様な感じがした。 (なんだ、これ) 「……そう、よかった。やっぱり歩は女神の様だね」 「僕、一応男……なんだけど」 「ふふ、知ってる」 じゃあなんで言ったんだ。 ……あれ?もしかして今までの話って…… (僕のこと褒めて、た……?) ―――そう思った瞬間、先程小さくなった心臓が暴れる様にどんどんと内側から叩き始めた。 (……久しぶり、だ。人とこんなに話すことも。相手の笑顔が僕だけに向けられるのも。褒められる、のも) 愚図な僕が、誰かに好意を寄せられるって、なんか、不思議。 不思議で……嬉しい。
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