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―――次の日
「おはよう!歩」
「わ。柚……季?」
朝学校に行こうと玄関を出た瞬間、柚季に挨拶された。
――家の向かいの電柱の影から。
「あー…朝から歩をこんな近くで見れるなんて、まるで夢みたいだ…」
「柚季ー……?」
うっとりしている柚季。遠くにいるから何を言っているのか分からない。
しばらくすると、柚季が凄い笑顔で早足でこちらに向かって来た。……あれ、なんかデジャヴュ。
「歩」
「あ、ゆ、柚季…おはよう……っ!」
「これから、俺は君の事をストーキングします」
「……へ?」
思い切って挨拶したら、公開ストーカー宣言された。なぜに…?
「だから、家の電話番号と歩の携帯番号とメアド教えて?」
(この人…本気だ…っ)
こんなこと、普通は断る筈だけど。
「……ん」
僕は何故か頷いてしまったんだ。
「本当!?ありがとう!やっぱり歩は可愛いな。じゃあ昼休みに俺、歩の教室に行くから用意しておいて!あぁ、今夜が楽しみだ!」
「う、うん……?」
柚季はそう言うと、どこかへ走り去ってしまった。
(嵐が、過ぎ去った……)
―――この時僕は、恐怖とはまた別の、心臓がドクドクと音を立てているのを心地好く感じていた……。
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