※絶対なんて無い

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人が殆どいないホームを抜け、改札を通って駅の入り口に辿り着いた。 安心感からか腰がぬけ、今の恰好なのも気にせず柱に背を預け寄り掛かった。 「こ、此処まで来れば……」 「此処まで来れば、んだよ」 「……っ!?」 ―――聞き間違える筈が無い。つい先程聞いた声が、横から聞こえた。 「あ、あ……」 若い男がスラックスのポケットに手を入れ、そこに立っていた。俺、全力疾走したんだが。 「あ?さっきのことか?」 自分の口はぱくぱくと形作るだけで喉から言葉が出て来ない。そんなことしていたら、男がそう言ってにやりと笑った。 男をよく見ると、背の高い短髪赤髪で、耳にはピアスがいくつもついていて、明らかに今で言う、不良。 「き、君。な、なな何で俺を、ちち、ちっ」 「痴漢したかってか?ムラってしたからにきまってんだろ」 「ム……っ!?」 「タイプだった」 「タッ!?」 「俺、ゲイだし」 「ゲー……ィ」 男の口から飛び出す不思議な単語の数々。こんなモノが俺と関わりを持つなんて絶対ありえないと思っていた。
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