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この世界は現実と殆ど変わらない平和な世界。
もし違う事があるとすれば、この世界にはもう一つの種族――獣人がいる。
獣人とは、耳や尾、または羽や角の付いたヒトの事を指す。
獣人を一人、パートナーとしてつける事が人間が一人前として認められる唯一の方法になっていた。
人間一人に獣人一人、という決まりは誰が決めた訳では無いが、最初の獣人の匂いがつくからなのだろう。必然的に一人に一人となるのだ。
もっとも、例外はあるが……。
―――――…
「見付けたよ蒼汰あああぁぁっ!今日こそ俺と契約してパートナーなってよおおおぉぉっ!!」
お昼休みが始まって約3秒。
茶色の犬が、廊下を駆けてきて壊れそうな程思い切りドアを開けて教室へ入ってきた。
……犬、と言っても、髪の毛と同じ色の犬耳をぴんと立たせ尻から尾を生やしちぎれんばかりに振っているでかい男だが…。
「無 理」
「きゃんっ」
俺はきっぱり断る。これで何度目だか忘れてしまった。
コウはふらついたあしどりで俺の席の着くと、向かい合う様に目の前に来てへにゃりと床に崩れた。
「うう…っ。なんでよぉ~…こんなに頼んでんのになんで折れてくれないんだよ~!」
「なんでってそりゃあ……うわっ」
理由を言おうとしたら、いきなり背中が重くなった。
「僕がいるからだよね。ねー、蒼汰ー?」
「…ナコ、重い」
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