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鬱蒼と雑草が広がる手入れの行き届いてない庭の片隅で、夏の虫たちが旋律の和音を奏で、寝苦しい夜を少しでも快適に眠れるよう誘ってくれる。
ここ何日か熱帯夜が続いていたが、今夜はその熱帯夜も連続的記録更新を途絶えさせていた。
ここのところ寝不足が続いていたが、少し気温の下がった今夜はいつも以上に快眠に溺れることができるだろう。
だが、早々と寝床に着き、その夢見を楽しんでいたブロフィーは、非日常とも言える地響きと思しき轟音で目を覚ました。
ゴゴゴゴ…
地面を唸るようにして這ってくるその音は枕を通して脳の奥に直接響いてくる。
「じ、地震か」
まだ経験こそしたことはないが、この世界は突如として地面全体が大きく揺れる現象に襲われることがあるという。
知人から聞いたその話を思い出し、ブロフィーは飛び起きて身を強張らせた。
「あ、あなた…」
隣で眠っていた妻が、恐怖を顔に貼りつかせてブロフィーの傍へ寄ってくる。
「大丈夫だ。大丈夫」
ブロフィーは妻の肩に手を回して引き寄せると、自分に言い聞かせるように何度もそう呟いた。
経験したことのない恐怖が迫りこようとしているこの瞬間は何て恐ろしいのだろう。
ブロフィーは音に連動して微かに震える足元の布団を見つめた。
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