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ドドドド… 押し寄せる地響きのような轟音はもうそこまで迫ってきていた。 どこかで飼っていた酪農の乳牛や馬たちが悲鳴のような嘶きを上げて、狭い村の道をひた走る。 牧場の柵が壊されたのだろうか。 そんな思考も働かない刹那、近くでバキバキッと木材の折れる乾いた音が鼓膜を突き破った。 少し離れた隣のジョージの家が、追いやられた乳牛の衝突によって一本の柱を薙ぎ倒す。 さらにはそのに迫った黒い巨大な物体が、鋭い角を躊躇いもなく振るって乳牛を襲った。 難なく引き裂かれる乳牛の体は、赤い液体を噴き出して横たわる。 一匹、二匹と暴走する黒いモンスターが、重厚な足音と共に目の前を駆け抜け、人々を襲う。 いつしか、それに対抗しようとする男たちが火のついた矢をモンスターに向けて放ち始めた。 我が道を行くとばかりに猛スピードで駆け抜ける黒い悪魔が増え始める。 女性たちは悲鳴を上げながら、行く先なく逃げ惑う。 さらには、目標物を見誤った火矢が村民たちの住居に命中し、容赦なく炎を上げ始めた。 藁葺き屋根の家屋を舐めるように赤々とした炎が広がっていく。
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