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4.眠れない夜
「ピピピピ……朝だ、朝だぞ、いつまで寝ている……ピピピピ」
いつもなら目覚ましが鳴り響く前に目が覚める。
ピピピピ……ピピピピ……ピピピピ……
「うわー、もう、なんて朝なの」
髪をかきむしりながら、うつぶせの体制になり、枕に顔をうずめる。手が届きそうで届かない。
そんな位置に目覚ましを置いておくのは、長年の経験から年に1回か2回、目覚ましを止めて二度寝をし、化粧もほどほどに家を飛び出すことがある。
まさに今日がそんな日だった。
「ピピピピ……朝だ、朝だぞ、いつまで寝ている……ピピピピ」
「はい、はい、今起きますよー」
部屋の中の話し相手は、冷蔵庫と目覚まし時計、トースターにやかん、それから――つまりは部屋の中にあるものすべてがわたしの話し相手になってくれる。
「うー、あんまり眠れなかった……」
昨日の出来事。
彼との出会いの余韻がワタシに簡単に眠ることを許さなかった。
不覚にも彼の顔はあまり覚えていない。
まともに見られなかったし、あまりにもすっきりした顔立ちだったので、特徴的をつかめなかった。
覚えているのは見上げるほどに大きな体とそれを包み込むとまるでマントのようなトレンチコート、キャベツを鷲掴みにした大きな手、そして……。
「そしてあの子宮に響くような低い声……やばい、またドキドキしてきちゃったぁ」
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