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「あー、そうか、あれ以来か……」
そうだった『あれ以来』電話で話していないし、『あれ以来』なんだ……眠れない夜を過ごしたのは。
玄関を開けると外はひんやりとした空気に包まれていた。昨日と同じだけど、この空気は昨日ここにあった空気じゃない。
パン!パン!
わたしは両手でほほを叩き、いつもの気合を入れた。
高校時代陸上をやっていたわたしは、スタート前にいつもこうして集中していた。
いつからか朝家を出るときは必ずこうやってほほを叩いている。
家から駅まで10分。
わたしの足取りはいつものようにしっかりと、軽やかにいつものリズムを刻んでいる。
スイッチが入ったわたしの頭の中は、今日のクライアントとの打ち合わせのことですでに頭がいっぱいになっていた。
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