1の巻

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1.土曜日のタマネギ  11月、街はすっかり冬支度を始めていた。  気の早い恋人たちは、クリスマスが待ち遠しくてしかたがない。  今日は土曜日――2週間前から約束。  彼が遊びに来てくれる。  ここのところ忙しくて、ろくに会うこともできなかった。  ……できなかったのだと、思う。  わたしは、近所のスーパーに買い物に出かけた。  よく晴れた気持ちのいい天気に、わたしの心は少しだけ弾んでいた。 「大丈夫、きっと大丈夫」  二人の心が少しずつ、離れてきているのを感じていた。  恋愛は初めてじゃない。  今がどういう状態なのかは、わかっているつもり……  客観的に見ても『マズい』と思う。  彼はとても優しくしてくれる。  やさしく包んでくれる。  わたしはそれに甘えて、甘えっぱなしで  ……少しばかり、浮かれていたのかもしれない。  彼はまじめ。  まっすぐにわたしを見つめてくれる。  わたしはそれに耐え切れずに、目をそらしてしまう。  彼の優しさはわたしを不安にさせる。  彼の純真さはわたしにはまぶしすぎる。  時々思いつめたような表情をする彼に、わたしは何もしてあげることができなかった。  だから今日は……。  だから今日は暖かいポトフを作って――。  作って……。  わたしは彼に甘えるの?謝るの?  それとも……。 image=460991630.jpg
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