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6.LONELY BUTTERFLY
「あれー、今日は先輩の話を聞くんじゃなかったんでしたっけー」
会計を済ませて店の外に出るとサッチンが急にわたしに絡んできた。
少し飲ませすぎたか。
「いーの、いーの。それは今度のお・た・の・し・み」
「わー、やだー、先輩か・わ・い・いぃ。もう、どーして世の中の男どもは先輩のこと放っておくくんですかねー」
おいおい、だいじょーぶかぁサッチン。
「こら、もう、調子に乗って飲みすぎるんだからサッチンはー」
こういうときにキヨミは頼りになる。
彼女がどんなに食べようともどんなに飲もうとも、前後不覚になったことを見た事がない。
「先輩、大丈夫ですから、ワタシ、帰る方向同じなんで、途中まで送っていきますから」
「そう、もし大変そうだったらタクシー使っていいからね。領収書くれたらわたしが何とかするから」
世の中にはついていい嘘といけない嘘があるとか……。
確か部長がいっていたんだっけ?
「さすが先輩、頼りになるー」
「くれぐれも他言無用だからね」
「あいあいさー」
キヨミの前の彼氏の口癖らしいことを聞いたのは、去年の今頃だったっけ……。
これはキヨミとワタシだけの秘密。
「じゃーね」
こうして彼女たちと別れた。
別れて5分。
駅に着く頃にはすっかり余韻は冷めていた。
電車に乗って一駅。
すでに気分はブルーになっていた。
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