2の巻

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1.涙の数だけ 「うわー、もうこんな時間」  土曜の朝のわたしは、そう、誰にも見せられない。  100年の恋も冷める瞬間は毎週この時間に訪れる。  もっとも今は余計な心配というより無駄な妄想だと目の前のわたしがマヌケな顔でほくそえんでいる。 「あーあー、今日はまた、一段とおいしゅうございますなぁ~」 「う・る・さ・い。黙って仕事しなさい」  鏡の仕事はいつも完璧だ。  常にありのままのわたしを映し出す。  だから嫌いだ。 「お腹すいたー」  冷蔵庫の中を物色する。  いつもはがらーんとしている土曜の朝の冷蔵庫の中は、相変わらず食材で一杯だ。 「たまにはやりますか」  タマネギ、ニンジン、ジャガイモ……、そしてキャベツとウインナー。  あー、エプロンエプロンっと。  親元を出るときにお母さんが買ってくれた寸胴鍋。 「こんな大きい鍋、一人暮らしには必要ないよ」というわたしに 「なにを言ってんの? いつまで独り身でいるつもりなの?」とちゃかすお母さんの横で、どこか不満げにお父さんが鍋を見つめていた。  今のところ期待に添えず、こうして一人でがんばってます。image=461093802.jpg
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