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「洗濯したら、買い物に行こーかな」
洗濯機は無口だ。
黙々と仕事をこなす。
でも気分が乗ってきて鼻歌を歌い出すと、掃除機はいつもわたしを小馬鹿にする。
「それいつの曲だい?随分懐かしい曲だよね。あー、そこ違うよ。そこはね――」
「もう! 邪魔しないでくれるー! せっかく気分よく歌ってるんだから」
久しぶりにおもいっきり家事をやった。
なんだかウキウキしているわたしに部屋の中も騒がしくなっている。
「なんかいいことでもあったのかしらね?」
「さーて、どうかしらねー」
化粧道具たちはこそこそと噂話をしている。
かぼちゃが馬車に変わる瞬間、これは恋の魔法?
それともいたずら好きな天使のキッス?
「夢見る少女の出来上がり!」
ってわたし、何うかれてんだろー……。
見事にメイクが決まった。
こういう日は何かいいことあるかもしれない。
「涙の数だけ女は強く、美しくなるの」
季節外れの冬の蝶々。
冬の空がこんなに気持ちがいいだなんて、誰も教えてくれなかった。
「さて、いきますか!」
季節外れの冬の蝶々。
冬の空に独りぼっち。
誰かに捕まえて欲しいのに。
誰もわたしを気付いてくれない。
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