2の巻

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「ははぁ、調子に乗って買い過ぎちゃいました」  ちがう、そうじゃない、他に何か言う事があるでしょう!  もう、どうしよう、信号がかわっちゃう。  彼の視線が信号機へ写った。 「なんかいいことでもあったのかな? ところでキミはこの町の人?」 「いえ、あ、えーと、でも5~6年になります。ここに住んでから……」 「この辺にコーヒーの専門店とかあるかなぁ? 引っ越してきたばかりで、まだよくわからないんだ。豆を切らしちゃって……」  わたしには心当たりがなかった。  インスタントコーヒーしか飲まないわたしには、コーヒー豆のことなどわかるはずもなかった。 「ごめんなさい、わたし、インスタントしか飲まないから……」  あっダメ、信号変わっちゃったよ。 「そう……、へんなこと聞いちゃったね。じゃぁ」  彼は人波に少し遅れて交差点を渡しだした。  わたしはまるで動く事ができない。  追いかけなきゃ、追いかけないと……。  お願い振り向いて!  恋したっていいじゃない! 「あのー、よかったら一緒に探しませんか?」  わたしはとうとう一歩前に出た。  フラフラとよろめきながらも、クラクラになりながらも、それでもわたしは一歩前に踏み出した。  彼の大きな背中めがけて……。
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