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「もしもし……」
「ごめん、俺、いけない…もう逢えない…ごめん」
「うん、わかった……じゃぁ」
「えっ…あぁぁ…じゃぁ、元気で…」
「うん、大丈夫だから…大丈夫だから」
わたしは最後に嘘をついた。
部屋中の空気が静まり返る。
電話も、タンスも、時計も……みんなわたしに気を使っているようで、心が痛かった。
独りぼっちの晩御飯。
不思議と涙は出なかった。
「わたし、こんなに料理下手だったかなぁ……」
出来上がったポトフを食べる前に、わたしの涙はすでに枯れていた。
ポトフはいつもよりも、少し、しょっぱい気がした。
もう、背伸びしなくていいんだ。
そんなことを思い出したら、また、涙が溢れ出そうになる。
背伸びしていたわたし、バイバイ……。
「わたしは大丈夫なんだから」
精一杯の嘘を、それでもわたしは最後まで突き通そうと必死だった。
「大丈夫なんだから!」
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