1の巻

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「もしもし……」 「ごめん、俺、いけない…もう逢えない…ごめん」 「うん、わかった……じゃぁ」 「えっ…あぁぁ…じゃぁ、元気で…」 「うん、大丈夫だから…大丈夫だから」  わたしは最後に嘘をついた。  部屋中の空気が静まり返る。  電話も、タンスも、時計も……みんなわたしに気を使っているようで、心が痛かった。  独りぼっちの晩御飯。  不思議と涙は出なかった。 「わたし、こんなに料理下手だったかなぁ……」  出来上がったポトフを食べる前に、わたしの涙はすでに枯れていた。  ポトフはいつもよりも、少し、しょっぱい気がした。  もう、背伸びしなくていいんだ。  そんなことを思い出したら、また、涙が溢れ出そうになる。  背伸びしていたわたし、バイバイ……。 「わたしは大丈夫なんだから」  精一杯の嘘を、それでもわたしは最後まで突き通そうと必死だった。 「大丈夫なんだから!」 image=460991605.jpg
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