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「きっと、きみは、こないかぁ~」
わたしは仕事帰り、一人家路を急いでいた。
住み慣れたこの街も、気がつけば少しずつ変わってきている。
女一人でも気軽に入ることができたショットバーは前の年につぶれてしまい、駅の反対側に住んでいた学生時代からの友人も、同じ頃に結婚して引っ越してしまった。
居場所がない。
もうすぐクリスマスだというのに、スケジュール張には仕事のことと、実家に帰ることしか書いていない。
「みんなあいつがわるいんだ」
別にふられたわけじゃない。わたしからおりただけ……。
「あれー、そんな歌詞のヒット曲、昔なかったかなぁ~」
わたしはいつもどおりだった。
いつもどおり恋をして、いつもどおりアプローチした。
あいつは恋の駆け引きとか、遊ぶとか、そんなこととは無縁なタイプ。
すぐ手の届くところまで近づいて、お互いに見合ってしまった。
ちょっとなれた男なら、すんなりことは運んでいたはずなのに……。
あいつったらちっとも煮え切らなくて、わたしは作戦の失敗を認めつつも、このままでもいいかなぁと思っていた。あの娘(こ)が現れるまでは。
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