1の巻

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「きっと、きみは、こないかぁ~」  わたしは仕事帰り、一人家路を急いでいた。  住み慣れたこの街も、気がつけば少しずつ変わってきている。  女一人でも気軽に入ることができたショットバーは前の年につぶれてしまい、駅の反対側に住んでいた学生時代からの友人も、同じ頃に結婚して引っ越してしまった。  居場所がない。  もうすぐクリスマスだというのに、スケジュール張には仕事のことと、実家に帰ることしか書いていない。 「みんなあいつがわるいんだ」  別にふられたわけじゃない。わたしからおりただけ……。 「あれー、そんな歌詞のヒット曲、昔なかったかなぁ~」  わたしはいつもどおりだった。  いつもどおり恋をして、いつもどおりアプローチした。  あいつは恋の駆け引きとか、遊ぶとか、そんなこととは無縁なタイプ。  すぐ手の届くところまで近づいて、お互いに見合ってしまった。  ちょっとなれた男なら、すんなりことは運んでいたはずなのに……。  あいつったらちっとも煮え切らなくて、わたしは作戦の失敗を認めつつも、このままでもいいかなぁと思っていた。あの娘(こ)が現れるまでは。
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