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「なにのむ?」 「ショートラテ」 広隆は、ん、と短く返事をすると、カウンターの向こうでエスプレッソを落とす。広隆の手元をなんとなしに眺めながら俺はカウンターに肘をついて、ショットグラスに少しずつ注がれるエスプレッソを待った。 店内は空席が半分、時間も合間って、サラリーマンが多い。テーブル席に座るひと組のカップルがマグカップを両手で持って、笑っている。 「お待たせ、ショートラテ、エキストラホット」 「オーダーが違うんですけど」 「雨で肌寒いから、俺なりの気遣い」 「モテ男はやることが違うね」 「だろ?もっと褒めてよ」 25歳の既婚男には見えない広隆は、歯を見せて笑う。俺とふたつしか違わないのに、大人の振る舞いが似合う、でも子供のような、男。 作られたばかりのラテに口をつけると、ふわふわのきめ細やかなミルクの泡が、エスプレッソの苦味と一緒に口に広がる。 広隆に目をやると、相変わらず目を細めて笑っていた。うまいだろ、と、言われたから、うまい、と返した。
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