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『…お、おはようございます…』
吹っ飛ばされて、襖ごと庭に落ちた私は肩からずり落ちた寝間着を片手で元に戻しながらそう呟いた。
うん、なんていつも通りの寝覚めの悪い朝だろう。
何で私の部屋ってばあんなに黒焦げなんだろう。うん不思議だな。
「おはようございまさァ、今日もぶっさいくな顔で涎垂らしながら寝てましたねィ。
写メって隊員に一斉送信しておきやした。」
ニコニコ…と言うよりニヤニヤした笑顔でバズーカを肩に担ぎながら私の部屋の残骸の前に佇むのは我が隊長様。
朝から目に悪いぐらいのイケメンだけど、朝から心臓に悪いぐらいの性格の悪さだわ。
『この襖替えたばっかりなんですけど、』
「あーあ、土方さんに怒られても知ーらね」
『お前がぶっ壊したんだろうが!!なに私が壊したみたいな言い方してんだ!!』
はぁやれやれ、こめかみに人差し指を当てて大仰に溜息を吐く隊長は様になってる分余計に腹立つ。いつものことなので、盛大に舌打ちをして立ち上がる。
寝間着代わりにしている白い着流しに付いてしまった土をサッと右手で払ってから傍らに落ちてある布団を抱える。
『うーん……このまま洗濯場直行ですかねぇ、桜ちゃんには謝っておこう。』
「お前は女中に迷惑掛けすぎなんでィ、ちったァ感謝しとけ。」
『私が彼女に掛ける迷惑の八割は隊長が原因だって知ってました?』
人の部屋を大破しておいてしれっとポーカーフェイスを気取る隊長にイラッとしつつも何だかんだで慣れてしまった自分が恐ろしい。
慣れって…恐ろしいのね。
「それにしてもタフになったもんだねィ、鳳。
最初の頃はギャーギャー喚いてたくせに。」
『そりゃ毎日部屋吹っ飛ばされてたら慣れますよ。不本意ですけどね。』
しみじみと成長した子供を見つめる様な目を向けられて、何だろう…凄く腑に落ちない。
もう隊長からの嫌がらせのオンパレードを華麗にスルーするだけのスペックは神陰さんは手に入れているのですっ!!
「ふーん……、そりゃあご苦労なこって。」
何だか含みのある笑いを一つ零して、縁側を挟んで下にある私の顔を見下ろす形で隊長は一言。
「ま、せいぜい頑張って下せェ」
妙に意味深な言葉を残してスタスタと自室に帰ってしまった。
『?』
何なんだ、あの人。
汚れた布団を握りしめて一人、隊長の残した言葉について考えた。
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