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「こんばんは、お坊っちゃん」
突然、背後から声がしました。慌てて振り向くとそこには、金髪で無精髭を生やし、鼻眼鏡を掛けた白衣の男が立っていました。
「だ、誰です!?」
「うーん、本名は訳あって言えないけど…まぁ、お兄さんのことは『Dr.リアリスト』って呼んでくれればいいよ」
Dr.リアリスト…『現実主義者』?
変な名前の男ですね。私が彼を疑わしく見ていると、彼はこう話を切ってきました。
「それにしてもこんな時間に一人でフラフラ、一体何をしているのかな?」
「さ、探し物を。忘れてしまった大切な何かを」
「探し物?お兄さんには君のほうが捜されるべき迷子にしか見えないけど」
その言葉を聞いたとき、頭の中で声がしました。知らない、知らないんだ!と。
「あ…ああっ!」
頭を抱え、フラフラと元来た道をたどろうとしたとき、リアリストに止められました。
「待って。君の捜すものはそんな所にはないよ」
「?」
何を言っているのでしょう。
「俺は真実を知っている」
…え?
「どういうことですか!?真実を知っているって…」
「まぁ、付いてくればわかるよ。さぁ、こっちにおいで」
くるりと背をこちらに向け、先へと歩いていくリアリストに私は付いていくことにしました。
そして着いた場所は…。
「君が見るべき真実はここにある」
迷子旅という名の散歩の終点は―…
踏切。
「あ…」
思い出しました。
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