突然の別れ。

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 父が介護ベッドで寝ている部屋の電気が消えていた。いつもは着いているのに。  自転車で仕事から帰宅した僕は、なんとなく嫌な胸騒ぎがした。  でも、まさか、そんな筈はない。だって昨日の夜、父は僕と一緒に夕飯を食べたのだ。 「うどんの味が濃い過ぎる」なんて僕の味付けに文句を言ったりしながら。  僕は父の居る部屋に入る。不安で畳に着けてしまいそうな膝に力を入れて電気を着けた。  父は介護ベッドの上で体を左向きに寝ていた。ように見えた。 「おい」僕が声をかける。「おいってや!!」今度は先程よりも大きな声で言ってみた。しかし父は目を閉じたまま、無反応。僕は父の肩に手を触れてみた。 「嘘やろ」僕は力無く、そう呟いた。父の右腕は弾力が無くなり、冷たくなっていたのだ。 「嘘やろお父さん!!」何十年ぶりかに父をお父さんと呼んだ。「嘘やろお父さん!! 昨日は喋っとったやんか」必死に叫んでも、父が返事をする事は無かった。  10月9日。死因『急性心停止』で僕の父はその人生を終えた。享年66歳。
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