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外は少し肌寒かった。それでも秋の空は清々しいほど晴れていて、日差しの下では温もりを感じられた。
近くを流れる河原で足を止め、川に向かって石を投げた。水面に向かって平行に、手首を返し回転させながら石を放ると、石は水面で数回跳ねて川に沈んだ。
ひとしきり石を投げると、私は悩んだ。優子とのこと、続けるべきかどうか、と。
不意にポケットから振動が体へと伝わってきた。携帯を取り出し画面を覗くと、受信メール一件と表示がある。
相手は優子だろう。おもむろにメールを開いて中を確認する。
『会いたい』
書かれていたのはそれだけだった。
目を瞑り、大きなため息を吐き出した。続けざまにさらに大きなため息をつくと、河原の土手に腰を下ろし、両手で頭を抱えて自問自答を繰り返した。
――会うべきか?
―――いや、会う理由など無い。
――会いたいか?
―――何も今さらだろ。
――それでも会いたいんだろ?
―――いや、会いたいとは思っていない。
――では、会わなくてもいいのか?
―――……。
――本当は会いたいんだろ?
―――ああ、会いたい。もう一度だけでいい。会って話をしてみたい。
私は携帯を開きメールを打った。
『俺も会いたい』
ただそれだけを打つと、静かに送信ボタンを押した。
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