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 優子とメールを始めて二日。月曜日。今日からまた長い一週間が始まろうとしていた。  毎日のように見ていた夢は今はない。静かに眠り、穏やかに朝を迎える。 ありふれた日常がそこに戻ってきた。  昨日の晩、優子と待ち合わせの時間と場所を決めた。月曜の午後7時、つまり今日の夜。場所は横浜駅。淳一の心は躍っていた。罪悪感はもちろんあるが、それ以上に優子と会うのが楽しみだった。  今朝の妻はいつもより調子が良く、出がけにキスをし玄関から見送ってくれた。出産予定日、一週間前。  送受信メールや送受信履歴、細部に至るまでメールの痕跡は消去していた。  しかし、風呂に入っている時や寝ている時。無防備な状態での受信が恐かった。いくら隠蔽しようにも、携帯を手にしなければ仕様がない。それでも、今の淳一にメールをやめる気などはまったく無かった。  昨日の晩。夜になっても妻が起きてこなかったので、夕飯の前に風呂に入ることにした。 入る前に寝室に向かい、「風呂入ってくるね」と声をかけたが、寝ているのか、妻の反応は無かった。  髪を洗っている時だった。ふと、背後から音がした気がして、急いで洗い流し振り返ったが、そこに人影はなかった。  ドアを開け確かめたが、やはり誰もいなかった。そのまま携帯に視線を落とすと、背面ランプが光っていた。濡れた手をタオルで軽く拭き、携帯を開いて中を確認する。受信メール一件。 ――さっきの音はバイブだったのか?  メールは優子からだった。内容を確認し終わるとメールを消去し、再び風呂場へ体を戻した。
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