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 驚いて目を向ける。左手を握る右手、ゆっくりと腕を伝うように視線を沿わせてゆく。  赤いジャケット。それに包まれている細くしなやかな手首。 小柄なのか、腕はそんなに長くない。 白く透き通るような首筋。ほっそりとしていて、か弱さまでも感じさせる。 視線が顔まで達したとき、左手を握る者と目があった。優しく微笑むように笑っている。 ――優子。 「お久しぶりです」 そう言って優子は手を離し、軽く頭を下げた。  驚いた。年齢的に、確かに老け変わる歳ではないのだが、目の前にいる優子は……まるで、付き合っていた当時から、時が止まっているんじゃないか?と思わせる程に、そのままだった。  容姿に驚き黙っている私に、怪訝な表情で優子は尋ねた。 「どうかした?」  優子の言葉にハッと我に返り、慌てて言葉を返した。 「あっ、いや、別に。それより、お前ほんとに変わらないな」  ふふっと笑って優子は言った。 「そんなことないわ。私だって年を取ってるのよ。それに、それを言うならあなただって変わらないじゃない」 「そうか?まあいいか。それより、場所を移そうか」  そう言って、私は近くのレストランへと歩き出した。その歩みは、隣を並んで歩く優子の歩調に合わせるように、当時のようにゆっくりとしたものだった。
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