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 レストランまでの通りは人が多く、あまり優子と話すことなく、賑やかな街の中を静かに歩いていた。  レストランに着いてからゆっくり話そう。そう考えながらレストランへと歩みを進めていた時だった。優子が私のスーツを軽く二回引っ張った。何か用かと優子の方に顔を向ける。振り向いた私のことを見て、優子は言った。 「どこに向かっているの?」  何とも言えない感じだった。まるで、行き先を知っているのに、それを確かめるように訊いているような、そんな違和感を感じさせる言葉だった。 「レストランだけど、どうかした?」  私の言葉を聞いた優子は、少し考えているようだった。私は、もうすぐだから。と言って、再び歩き始めた。  3m程進んだ所で、優子はまたスーツを引っ張った。  振り返って、どうした?と尋ねる私に、優子はこちらの様子を窺うように口を開いた。 「行きたい場所があるんだけど……」  彼女はそのまま俯いてしまい、表情を窺い知ることが出来なかった。私の方も店に予約を入れていたので、理由を訊かない訳にはいかなかった。 「どこに行きたいの?飯の後じゃダメ?」  彼女は俯いたまま、ごめんなさい。と小さく謝った。  私は諦めた。優子にも何か事情があるのだろうと、断りの電話を店に入れた。  電話の最中、彼女は再び謝ってきた。私は構わない。と言うように、左手を顔の前で数回振った。  電話が終わると優子に、ついて行くよ。と言って、彼女に向かって微笑んだ。ありがとう。と彼女も笑顔で返し、彼女は先導するように先を歩き始めた。
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