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目を大きくひん剥き、吊り上がった眼から放たれる鋭い眼光。下唇を強く噛み締め、血を滲ませて、瞬き一つ無いままこちらを睨み続けるそれは―――
憎悪。
私は恐怖した。背筋に悪寒が走り、ガタガタと肩が震えだす。その時、鏡越しに妻と目が合った。すぐに目を瞑り息を殺す。しかし、震えは止まらない。
――バレたのか?そんな訳ない。大体、どこでバレると言うんだ!
不意に、背中に細い指の感触が伝わってきた。
指は私の背中を伝い、何か文字を書いているようだった。神経を背中に集中し、それを必死に読み取った。
『すき』。指はそう描くとスッと消えた。
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