独り

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なんとなく腑に落ちないが このままではらちがあかないので 自分から名乗ることにした。 「俺は藤島 唯(ふじしま ゆい)。近所に住んでたんだが…。ま、覚えてないよな。お前は確か、齋藤…」 「いや、今は澤村。澤村 良子(さわむら りょうこ)」 親の都合ってやつかね。 嫌な世の中だ。 「名前はわかった。…しかしなんで寝袋なんて持ってたんだ?」 「たまには天井じゃなく、もっと高いものを眺めたいときもある。 ワンカップ片手にブランコ乗りたい時があるのと同じだよ。」 「風邪ひいてるのにか?」 「…うるせ。」 「………まあ信じたふりはしといてやるよ。とりあえず風邪治せ。それまで俺の部屋の天井で我慢してくれ。」 「会ったばかりの女をお持ち帰りってか(笑)。物騒な世の中になったもんだ。」 「ちげえよ!熱凄かったし辛いだろ?黙って寝とけ。どうせ知らない顔でもないし、治るまでいていいから…。」 「いや、お前 お人好し過ぎないか…?」 「よく言われるんだ。あとお前って呼ぶな。」 「そうか。じゃあ、唯。」 「なんだ?」 「腹がへった。」 ……このやろう。
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