「日記」という言葉がある。

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 ………。 ・紀元前500年、ペルシア戦争。  大陸の北東の人間同士の争い。地味に約50年にも及ぶ戦いだった。 ・西暦208年、赤壁の戦い。  大陸の東の方の人間共の争いであった。あれは意外とアツいものであった。 ・西暦642年、ニハーヴァンドの戦い。  大きな大陸の南西の方、海と大地が入り混じった場所の争いであったかの。ようわからん。 ・西暦1600年、関ヶ原の戦い。  大陸の東の一番端っこの人間の争いだ。ここには不思議な人間が暮らしているようじゃな。 ・西暦1840年、アヘン戦争。  大陸の東の方の人間の争いである。これは金の争いだったようじゃな。 ・西暦1914、第一次世界大戦。  西へ東への大わらわであった。  かなりの規模であった。 ・西暦1941年、第二次世界大戦。  地球の反対側同士が戦争をしていた。第一次なんぞよりずっと激しい争いであった。  ………。  雲の上の神様は、籐椅子に腰掛け、青い背表紙の何かを読んでいた。  おもむろにそれをパタンと閉じると、フゥーと大袈裟に溜め息を吐く。 「どうなさったのですか? 神様」  いつもと違う様子の神様が気になり、私は神様の脇に立った。  私に気がついた神様は、ゆっくり振り向く。 「おお、ミカエルか」 「どうなさいました?何やら物憂げな表情をなさっていましたが」 「ああ……」  伏し目になりながら、神様は悲しげに言葉を続けた。 「いや、今な。今までの下界の人間の営みを記した日記を眺めていたのじゃがな」  顔を伏せたまま、これじゃ、と私に青い本を見せる。 「やはり人間は争いを繰り返す生き物なのかね……」  そう言うと、神様はまたまたフゥッと溜め息を吐いた。  正直私は呆れた。  そんなことわかりきったことじゃないですか、と。  その時、私はとんでもないことに気がついた。顔面から血の気が引くのがわかった。 「ちょっ、神様!?」 「……どうしたのかね?」 「そ、その日記帳に使ってる青い本、それって書いた事がなんでも現実になる『予言の書』じゃないですか!?」 「へ?」  手元にジッと視線を落とした神様は暫く黙っていた。  そして、一言ポツリと呟いた。 「どうりで、歴史が繰り返す訳じゃな……」
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