「宇宙人」という言葉がある。

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 初めまして。我輩は宇宙人だ。  おっと、そこのキミ。今、鬱陶しそうな顔をしたな。もしくは心配そうな、つまり我輩のアタマは平常なのか、という心配をしたな。  無礼な。我輩は至って健康だ。健康な宇宙人だ。  おっと、なんだって? 「人間だって宇宙に住んでいるのだから、お前が宇宙人なのはなんの不思議でもない」だと?  ふむ。確かに正論ではある。その意味では、我輩だって君らだって皆が宇宙人だ。  しかしそういうことではないのだ。我輩は、君らが言うところの「宇宙人」だ。  この惑星にはるばるやってきた。レッキとした地球外生物なのだよ。  うん? 今度はなんだ? 「どんな目的で地球に来たのか」だって?  なかなか鋭い質問である。キミは鋭いな。うん。  教えてあげよう。我輩は、この星に不時着したのだ。  本当は、ここではない別の星を目指していたのだが、地球付近で飛行船が故障してな。いた仕方なくこの星に着陸したというわけだ。  しかし、なかなかいい星だな、ここは。もっと誇りたまえ。  なんだなんだ。皆して笑い出して。なにが可笑しい。 なに? 「懸賞で当たった格安ソユーズの宇宙旅行で宇宙に行っただけで、しかも大気圏を出た途端に宇宙船が故障を起こして、あっという間に帰ってきただけで、『宇宙人』と名乗るのは可笑しい」だと?  やいやい、馬鹿にするな。  我輩、確かにこの目で宇宙を見たのだぞ。黒い暗幕の上に、まるでビーズをばらまいたかのような煌びやかな星々、そして地球は青かったのだぞ。  おいおい、待て待て君たち、どこに行く気だ、おいおい待て待て、行かないでくれーー。
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