「自動販売機」という言葉がある。

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 とある路地にポツンと置いてある、その自動販売機には一つの特徴があった。  自動販売機のプラスチックケースの向こう側には、なんの変哲もなく、ミネラルウォーターや缶コーヒー、甘い炭酸水等が整然と並べられている。  しかし、その自動販売機には、一カ所だけ何もおいていない場所があるのだ。  そして、その下には『140円』という値段と共に、素っ気なくこうラベルされている。  『ランダム』と。  簡単に言えば、その『ランダム』ボタンを押すと、売っている飲料水の中から正にランダムに一本出てくるのだ。  料金は一律で140円。出て来たのが120円の缶だろうと、150円のペットボトルだろうと、140円だ。  この『ランダム』だが、巷の一部ではこれが意外にも好評なのだ。  例えば、こんな経験ないだろうか。  喉が乾いたので自動販売機の前に立つが、いざ買おうと思ってもこれといって飲みたい物がない。  誰しも一度はあるはずだ。  そんな困った時に、この『ランダム』ボタンが便利なのだ。  まず、悩まなくていい。これは、多くの優柔不断者を歓喜させるはずだ。  おまけに、自分が損をするか得できるかというちょっとしたキャンブル性も味わえる。しかも、損してもせいぜい20円なので、そこまで損失感もない。  というわけで、今、知る人ぞ知る人気を博しているのだ。  ただ一つ難点なのが、そもそも無事に商品が出てくるか否かすらランダムだとか。
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