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「でも…流石に迷惑なんじゃ…」
「うるせえな、いいから付いて来い。そもそも、お前に選択肢なんてねえだろう?この無人の村で、たった一人で、どう見ても十歳に満たないガキと思われるお前が生きて行けるのか?大体俺が来なかったら、下手すりゃ死んでたんだぞ」
ガキは目を伏せ、沈黙する。
「ガキはガキらしく、大人に従っとけ。心配しなくても売り飛ばしたりはしねえよ。基本しがない鍛冶屋兼武器商人だが、たまに傭兵もやってるんでな…二人分の食い扶持くらい訳ねえ」
傭兵、と言う言葉にだろうか。ガキは目の色を変え、俺を見た。若干妙な反応だ。
「傭兵…戦にも?」
「当然だろ。稼ぎ時だ」
「じゃあ、強いんですよね」
「まあ、それなりにはな」
「なら…なら、俺に戦い方を教えてくれませんか」
ガキは暗い目をし、凄みすらある表情で言う。
「銀瞳の男か?」
ガキは頷いた。
「復讐か?」
少しの間。ガキは頷いた。
「復讐だけじゃねえな?」
ガキは沈黙している。
「奴の言葉か」
間。さらに長い間。
「…あいつが憎い。でも、それだけじゃないんです。俺は多分、あいつを追わないといけない。あいつの言う通りに、何時かまた必ず会わなければならない…そう思うんです」
その為の、力が欲しい。ガキの望みはそれだった。
…不吉さを感じなかったと言えば、嘘になる。右腕の刺青も気になっていたし、何よりもガキの話の中で笑う、銀瞳の男の言葉だ。
恐らくこいつの生きる道は、とてつもなく苛烈で、とんでもなく過酷なものに成ってしまうのでは無いだろうか。
本当に、不運なガキだ。
「まあ別に構わんがな。だが、やるなら本気でやらせて貰う。俺の訓練は厳しいぞ、逃げるなよ…っと、そう言や名前聞いてなかったな」
何時までもガキガキ呼んでいる訳にも行かないだろう。
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