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何をどう苦しんでも、嘆いても、後悔しても、救われる事など決して無い。救われる資格も無い。それが、俺のような連中の末路なのだ。
こいつは、それを分かっているのだろうか。いや、分かっている筈が無い。
こいつはガキだ。どんな闇を飼っていようと、所詮何も知らないガキなのだ。誰かが導かなければならない、ガキなのだ。
それが、よりによって俺なんかに頼らざるを得ないのか。
本当に、不運極まり無い。
「…取り敢えず、もう夕方だ。今日はこのまま留まって、明日下山する。持って行きたい物があったら準備しとけ。両手がその様だしな、ある程度は俺が持ってやる」
村の後始末自体は、街に居る知り合いの金持ちに頼めばいいだろう。奴にはデカい貸しが幾つも有る、断りはしまい。墓も、墓石くらいは立派なのにしてくれる筈だ。
「はい…分かりました」
「後はまあ、取り敢えず休め。まだ雪だらけの険しい山道を行くんだ、少しでも体力を回復しとかねえと辛いぞ。何か食う物を準備するから、それまで寝てろ」
犀人は素直に頷き、そのまま布団に潜り込んだ。俺は食料品を物色しようと、台所の方へ向かう。
「死を食み、心を砕き…生き尽くす」
去ろうとする俺の背中に、その小さな呟きが響いた。銀瞳の男の言葉だ。
この不運なガキは、これからどんな生を送る事になるのか。俺には、何が出来るのか。いや、何か出来るのか。あの深く暗い闇をより拡大させる…させてしまう位が精々なのでは無いだろうか。そう思えてならない。
不運だな…持っていた物を手放さざるを得ない分、昔の俺なんかよりも遥かに。本当に、不運だ。
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