そんな気がする

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今、思えば僕はただの学生でただの社会人だったように思う。ただ学校に通って、適当に彼女を作って、別れて、バイトして、遊んで、寝て、卒業して、就職して、上司に胡麻を擦りながら、少しずつ給料を上げていくようなそんな人間だった。 自らの長くもない人生を振り返ったところでこんなものだ。何も面白みもない人生だ。僕自身そう思う。あの時はあんなに忙しかったのに、とか、あの頃は本当に辛かった、とか、自分の人生にそれなりに、というか、多少の苦労をしてきているはずなのだが、いざ振り返ってみればそういった感慨みたいなものは、実はそう多くなかったりする。不思議だ。僕はこれまでの人生、大なり小なり少なくない量の失敗や挫折、苦難や困難に立ち会っているはずなのだが、これではまるで順風満帆な人生みたいではないか。自分自身では全くそうは思っていないのに。ただ、過去を振り返ると同じような毎日しか送っていないはずなのだが、ただの一度たりとも同じ日を送ったことはないというのもまた不思議だ。  閑話休題。まず物語を語る上で忘れてはならないのが、やはり、どうしても主観が入ってしまうことだ。  どれだけ語り部だから、と意識したところで完全に客観的になることは出来ない。人は決して自分の世界から出ることは出来ない。自分の物語から脱落する術を持たない。主観から逃れることは出来ないのだ。  だが、こんな風に述べ立てたところで言い訳がましく聞こえることは否定しないし、むしろそういった意味合いで保険をかけることに近い。僕は頭の出来がいいわけでもなければ、国語や小論文が得意なわけでもない。  つまり、僕の語り部が悪かろうが僕はそのことについて何一つ責任を持たない、そう言いたいがためにあなた方の貴重な十数分を奪うことになったのも決して僕のせいではない。 そして、彼女たちのこともまた僕の責任ではないと僕は思いたいのだ。
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