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プロローグ 《滅びの国》
酷い耳鳴りがする。
原因は外から聴こえてくる『罵声』『怒号』『悲鳴』少女には全てが何の意味を持たない耳鳴りでしかなかった。
「姫様!!」
突如、部屋へ入ってきた侍女に手を引かれ少女は紅い廊下を走る。
走るたびに、お気に入りのスカートに血が跳ねて汚れる事を少女は不快に思っていた。
こんな時にそんな事を思うかと普通なら言うが、少女にとっては"コレ"はたかがそんな程度だ。
自分が住んでいる屋敷に死体が転がっていようが
自分が遊んでいた部屋に異臭が漂っていようが
自分が走っている廊下に血溜まりがあろうが
少女にとってはただのいつもと違う、つまらない景色でしかない。
そこらじゅうに転がっている
切り刻まれた死体
撲殺された死体
燃やされた死体
原型を留めていない死体
から溢れ出る血が、元々目が痛くなるほど赤い廊下を紅く染める。
壁に飾ってある有名な画家が書いた絵画は、無惨にも銃跡や返り血によって無価値な物へ変わっていた。
そんな変わり果てた屋敷の中をボーっと眺めていると、いつの間にか少女達は古ぼけた扉の前に来ていた。
「ハァ…ハァ…ここまで…来れば…」
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