一章 虫の知らせ

5/18
前へ
/23ページ
次へ
  「ねえ、そんなに暗くなって楽しい?軋魅ちゃんがそんな感じだと周りも暗くなっちゃうよ」 「うっ……」 返す言葉もない。 「テンション上げてこーぜ?早く元気にならないと、ロゼさん噛み付いちゃうからね、なんて」 言って、ロゼは自分の唇の端を指でぐいっ、と引っ張って見せた。 真っ白で健康的な歯が綺麗に並んでいる。 流石、元狼と噂されるだけあって、歯がの一本一本が鋭い。 あんな犬歯で噛まれたら、痕どころか肉を突き破って骨まで到達しそうだ。 犬歯ならぬ剣歯。 しかし彼の武器は飽くまでスケートボードであって、その鋭く尖った歯ではない。 あれもあれで武器になりうる感じがした。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加