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「…………!?」
慌て男が通った所を触る。
痛みもないし、血も出ていない。
今度はあのタヌキ腹の男の方に目を向けるが、相変わらず男は振り返る事もなく、ただただ前に進んで行く。
そこでやっと、少女は現状を理解した。
自分が死んだという事実を受け入れられた。
男は無視をしたのではなく、最初から少女の姿など見えていなかったのだ。
「あれれ、あんまし驚いてないみたいだね、珍しい。普通なら取り乱したりする所なんだけど。大丈夫?立てるかい?」
そう言いながら青年は手を差し出す。
少女はこくんと一度だけ頷くと、彼の手を借りて立ち上がった。
「ま、何でもいいや。素直に受け入れてくれて助かるよ、ありがと。さっきも言ったけど、中には理解しないで暴れる奴とかが居てさ。ホント」
大変なんだよねぇ、と手を広げてやれやれと彼は首を振った。
だが少女は青年の愚痴には興味がないらしく、まだ話の途中にも拘らず質問をぶつけた。
「あな……たは……」
「うん?」
「貴方は……何……ですか?」
少女の質問に、青年は首を傾げた。
「ふーん?キミは『誰』とではなく『何』って聞くんだ?」
その返しに、少女も同じく首を傾げる。
「だって、あなたは人間なんかじゃないでしょう……?」
青年は少女の言葉を聞いて、暫くの間ぽかんとしていた。
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