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「…………どうして、そう思ったんだい?」
出会ってからさほど時間も経っていない少女に非人間発言をされて尚、青年は笑顔を崩さない。
「まず、私の姿が見えている」
「それだけだと、ただ単に霊感とか第六感的なのが強いだけかもよ?」
少女の存在は今、幽霊や魂といったものに近い。
そのような存在は普通なら視認することは出来ないが、霊感等がある人間は見える事がある。
だが。
「それだと、私に触れられた事の説明がつかない」
そう、彼女のような存在はたとえ『見る』事は出来ても『触れる』事は出来ない。
文字通り住む世界が違うから。
しかし青年は少女に手を差し伸べ、少女はその手をとった。
人間であれば、出来ない芸当。
「私が思うに、貴方も私と同じ死んじゃった人。……違う?」
もし少女の仮説がまるっきり全て間違いだったらとしたらかなり失礼な言動になるが、当の本人はそんな可能性など微塵も考えていないようで、真っ直ぐな目で青年を見据えている。
青年は黙って、相変わらずの笑顔を少女に向けている。
やがて押し殺した笑い声が響く。
「……クハッ、まさか『人間じゃない』なんて言われるとはね、しかもちゃんと理由付きで。まあ間違いじゃないんだけど、正解とも言い難いかな」
「うん、じゃあ正体を明かすのも兼ねて、自己紹介でもしようか。はじめまして、お嬢さん。俺っちは久遠。射貫 久遠(イヌキ クオン)」
終始笑顔で頭を垂れ、久遠は言った。
「死神だよ」
これが後に音切軋魅(オトギリキシミ)となる少女と、射貫久遠との初めての出会いだった。
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