一章 虫の知らせ

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  「……ふう」 少し熱めのお湯を頭から浴びた軋魅は、仕事に行くため会社の廊下を歩いていた。 死神組織派遣会社。 沢山の死神が集うこの会社で、軋魅は働いている。 魂を狩り、然るべき場所へと送る。 だが相手だってハイそうですかと易々と狩られてくれる相手ばかりではない。 恨みつらみや死への拒絶で異形と化した者もいる。 当然『二度目の死』の危険性も孕んでいるのは言うまでもない。 大変だが、軋魅はこの仕事に誇りとやり甲斐を感じていた。 「………………」 シャワーを浴びて少しすっきりしたが、まだ頭の中が霞がかかった様にモヤモヤする。気持ち悪い。 原因はきっと、今朝見たあの夢。 人としての時間が終わり、死神として新たに生を受けたあの日の夢、あの日の記憶。 いや、正確には多分あの夢ではなく、久遠と初めて出遭った日の記憶ではなくその後。 ずっと記憶の奥底に仕舞い込んでいた思い出したくなかった事が、ずるずると引き摺り出されてしまった。 「あれから、随分経ったなあ……」 正直に言うと、軋魅は生前の事は鮮明に覚えている訳ではない。 所々記憶が抜け落ちている箇所があるが、あまり楽しくなかったという事だけは覚えている。 「ほんと、嫌になるな……」 「何が?」
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